ダイナースクラブ フランス レストランウィークには毎年レストランだけでなくビストロもたくさん参加しています。“でもレストランとビストロってどう違うの?”“「ガストロノミーレストラン」って何?”と思う方も多いのではないでしょうか。そのあたりをちょっと整理してみます。

ガストロノミーレストランとは

「ガストロノミー」とはフランス語で「美食」を意味する言葉です。レストランの中でも特に優れたテクニックと上質な素材、シェフのクリエイティビティーを駆使して美食を追求しているのがいわゆるガストロノミーレストランです。フランスでも、一般的には記念日などのハレの日に、または旅先の食の思い出として、あるいは旅の目的として、かなり前から予約をして臨む…そんな憧れの場所なのです。

ゆったりとした贅沢な空間、美しい皿やカトラリー、上質なテーブルクロスやナフキン、グランヴァン(偉大なワイン)と呼ばれるボルドーやブルゴーニュの銘醸ワイン、ソムリエやメートル・ドテル(給仕長)と呼ばれるプロによる優雅なサービスなど料理以外の美食の要素を楽しめるのが、ガストロノミーレストランの醍醐味です。そのため“ガストロノミーレストランで食事をする”ということは、フランスでは最低でも3時間、平均4時間はテーブルで過ごすことを意味します。

ビストロとは

一方ビストロは、ガストロノミーレストランよりもはるかにカジュアルな場所です。もちろんお財布にも優しく、日々美味しい食事を楽しめるお食事処としてフランス人に愛され続けています。ビストロの誕生は19世紀と言われ、その語源はロシア語の「急げ」を意味するbistroだったという説もありますが、実際のところ定かではありません。パリやリヨンなど大都市で働く人たちが、レストランほど時間をかけず、美味しいものを毎日しっかり堪能したい、そんな需要に合っていたのでしょう。ランチならば「プラ・デュ・ジュール」と呼ばれる本日のおすすめ料理をメインに構成される、いわゆる定食スタイルで、ブランケット・ド・ヴォー(仔牛のクリーム煮込み)、ナヴァラン・ダニョー(仔羊と野菜の煮込み)など、滋養たっぷりの煮込み料理が定番です。テーブルは小さく、テーブルクロスは紙、もしくはクロスがありません。

テーブルとテーブルの間も狭く、客の会話と調理やサービスの活気ある音であふれ、ビストロはいつも賑やか。ワインはボジョレの赤やマコンの白などの手頃な価格の銘柄が中心で、バロン(風船)と呼ばれるころんと丸く背の低いグラスに注がれます。言ってみればガストロノミーレストランが懐石料理店であるとすれば、ビストロはランチも営業しているサラリーマンの味方、気軽な居酒屋のような身近な存在なのです。

「ガストロノミー」と「ビストロ」
の融合 “ネオビストロ”

そんなビストロに変化が現れたのは、1980年代後半のこと。いくつかの有名なガストロノミーレストランがすぐ隣にビストロをオープンし始めたことにより、ガストロノミーのテクニックとシェフのアイデアが生かされたクリエイティブな料理が庶民的な価格で楽しめるようになったのです。1990年代になると、パリを中心にガストロノミーレストランから独立した若いシェフたちが敢えてビストロをオープンして、自分の世界観を表現し始めました。「ガストロノミー」と「ビストロ」の融合「ビストロノミー」の誕生です。そんな新しいタイプのビストロは、ネオ・ビストロとも呼ばれます。ネオ・ビストロでは、これまでの定番料理に加え、さらに洗練され、シェフのフィロソフィーを投影した自由な表現の料理が楽しめます。そしてフランスのみならず、日本にもこのビストロノミーの流れは確実に届いています。

親しい人と美味しいテーブルを囲む喜び

日本では明治以降、外交や宮中における公的な場で供される料理としてガストロノミーなフランス料理が定着し、さらに外国人が多く利用するホテルを中心に広まっていったため、日本のフランス料理はホテルの結婚式の料理に代表される、かしこまった高級なイメージで普及しました。しかし、フランス料理の敷居が高いのは今は昔。ガストロノミーであれ、ビストロであれ、ビストロノミ―であれ、日本のフレンチレストランのチョイスは本場フランスと変わらないまでに広がっています。それぞれスタイルは違っても、フランス人が愛してやまない「親しい人と美味しいテーブルを囲む喜び」という美食文化は、どのフレンチレストランにも息づいています。ぜひ、ダイナースクラブ フランス レストランウィークでフランスの様々な美食文化をご体験ください。

文・勅使河原加奈子