記事元:ヒトサラMAGAZINE
今アツい日本のフレンチに注目する連載。第2回目は、長野県にある重厚な蔵を改装してつくられた【ヒカリヤ ニシ】。国内外で研鑚を積み、若くしてリゾートホテルの総料理長としても腕を奮ったシェフが生みだす「マクロビオティック」に基づくナチュレフレンチが堪能できる。
CHEF'S EYE
✔マクロビオティックに出会いフランス料理の枠を超えた料理に
✔世界一の長寿を誇る長野県の秘密は水と野菜
✔世界に一つだけのレストランを目指して
おいしく体にいいものを通して、食の伝道師でありたい
生まれ故郷、栃木県の宇都宮にある【オーベルジュ】で音羽和紀氏に師事した後、リヨン、フィレンツェ、バルセロナ、ロンドンなどの有名店で研鑚を積んだ田邉真宏氏。帰国後、那須【二期倶楽部】の料理長を経て、28歳から長野県の【ヒカリヤ ニシ】の母体である【明神館】の統括総料理長に。この時にマクロビオティックの考えに初めて触れた田邉氏。マクロビオティックの世界的権威である「クシマクロビオティック」のアドバイザー免許を取得し、おいしさをさらに一歩進めて、体のことを考えたナチュラルフレンチで長野に来た人々を魅了している。
世界一の長寿を誇る長野県の秘密は水と野菜
「ちょうど僕が【明神館】に入ったとき、子どもたちにアレルギーが増えているという話題を耳にしたんです。そこで単においしいだけでなく、体にいいということが一番大切なんだと気づきました。そして出会ったのがマクロビオティック。なぜ、この食材をこの季節に食べればいいのか、なぜ火を通さないとだめなのかなど、食材には理論がたくさんあることを学びました」と田邉氏。広大な自社農園や直に生産者と顔を合わせて野菜を作り、それを使って、舌だけでなく体も喜ばすことができる料理を作る。フランス料理の枠を超えた、自分の料理の在り方を見つけたという。
「マクロビオティックと聞くとストイックに感じる方もいますが、体に良いだけでなく、こんなにも楽しめておいしいと思ってもらえたら、何よりもうれしい。そんな糸口になればいいなと思っています」。
長寿の秘密、長野県の野菜と水をふんだんに取り入れた料理
コースは肉と魚が両方選べるものがあったり、ランチ、ディナーともに5種類ほどあるのもうれしい。どれもマクロビオティックの考えに基づいたナチュラルフレンチだ。完全なるマクロビオティックのコースもある。フランス料理の基本ともいえるバターや生クリームを極力少なくしてもしっかりとした味わいがあるのは、素材のもつ旨みを存分に引き出しているからに他ならない。
「水道の蛇口を開くと“モンドセレクション”といわれるほど、長野県の水は豊富でおいしいんです。それがまた野菜のおいしさにもつながっています」と田邉氏。
寒暖差が激しい厳しい環境のため、野菜もミネラルや栄養素をたくさん蓄えながら育つ。「そんな野菜をたくさん食べている長野県は、今、世界一の長寿県になったんです。これほど素晴らしい農産物を作る長野県の生産者の皆さんの思いを、僕の料理を通して少しでも多くの人に届けることができたらなと思っています」。
コースに合わせワインとのマリアージュも楽しむ料理に合わせて楽しみたいのが長野のワイン。長野にはワイナリーも多く、ワインリストの半分が長野のもの。料理やワインなどをひとつずつ説明するスタッフの姿勢にも長野への愛着が感じられる。
「食材のことや料理法などを会話を通してお客様に伝えています。そうすることでストーリーが生まれ、それがおいしさの調味料にもなる。せっかく長野まで足を運んでくださったからには、いろいろな長野を感じていただきたい」。
歴史ある建物でいただく、世界にここだけのレストラン
ストーリーはレストランの建物にもある。実はここは120年以上もの歴史がある蔵。壁などは塗り替えたが、梁はそのまま残すなどほとんど手は加えていないという。エントランスも庭も広く、都会では味わえないゆったりとした贅沢さだ。フレンチでありながらマクロビオティックを取り入れるなど、世界的に見てもここだけでしか体感できないレストランとして、ルエ・エ・シャトーのメンバーにも選ばれている。食材や身体、そして建物にも愛情をもって接するおもてなし。そこには“次の世代にも残していきたい”大切なものがある。
ヒカリヤ ニシの店舗情報
フォーカスシェフとして田邉氏も「ダイナーズクラブ フランス レストランウィーク 2017」に参加。「日本の風土を感じながらフランス料理を食べる非日常感も楽しい。原木椎茸を使った僕の原点ともいえるべき椎茸のテリーヌや様々な蕪をつかった料理でお待ちしています」。
電話:0263-38-0186
住所:長野県松本市大手4-7-14
アクセス:JR松本駅から徒歩15分、松本駅発巡回バス「タウンスニーカー」北コース上土町・東コースはかり資料館下車
営業時間:営業時間:11:30~14:30(L.O.13:30)、18:00~22:00(L.O.21:00)
定休日:水曜
提供元: ヒトサラマガジン[hitosara magazine]
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楠井祐介(フリーライター)