記事元:ヒトサラMAGAZINE

今日本のフランス料理がアツい。連載第6回目は、2016年4月に博多にオープンした【ローブランシュ】。【オーグードゥジュール メルヴェイユ博多】の料理長を務めた白水氏と、東京・神楽坂の人気店【神楽坂しゅうご】の元オーナーソムリエ・佐々木氏がタッグを組んだ注目店だ。

CHEF'S EYE

✔全国の産地に赴き、食材を厳選
✔オープンキッチンで対話しながら作る変幻自在の料理
✔バー利用も可能な気軽に立ち寄れるレストランに

全国の産地に赴き、食材を厳選

シェフの白水鉄平氏

 物心ついた時から料理人になることを決め、小学校の文集にも「夢は料理人」と書いていた白水鉄平氏。調理師専門学校を卒業後、福岡から上京して東京・四ツ谷の名店【オテル・ドゥ・ミクニ】、東京・日本橋の【オーグードゥジュール メルヴェイユ】で修業。さらに渡仏して腕を磨き、帰国後は博多駅ビル内【オーグードゥジュール メルヴェイユ博多】のシェフを4年間務め、2016年4月に満を持して独立開店を果たした。九州の魚介を中心に、全国の生産者のもとに自ら赴き、厳選した食材を仕入れるのが白水氏の身上だ。

「食材を何よりも大切にしたいんです。そこで出会ったものや人を通して、ワクワクした料理を作りたい。それが自分のオリジナリティだと思うんです」と語る白水氏。

「毎月いらしてくださる80歳ぐらいのおばあちゃんがいるんですが、“ここに来るのが人生の楽しみ”と言ってくださる。そういう言葉を聞くと元気になれますね。おいしいものを作るだけでなく、お客様を幸せにするのがレストランの使命だと思うんです。そのためなら日本各地どこでも食材探しに出かけます」。

『天草産スズキのポアレ エスニック野菜 コブミカンの香り』

 九州の食材にこだわりつつも、全国に優れた生産者がいると聞くとすぐに駆け付ける白水氏。鳥取県の本州鹿であったり、愛媛県の青いレモンの島と呼ばれる離島からは柑橘類を取り寄せる。北海道の畜産料理集団【エレゾ社】からはエゾシカ、エゾブタ、そしてそれらで作ったシャルキュトリなど。離島や北海道にまで出かけていくバイタリティには驚かされる。おいしさのためなら地産地消から一歩進み、自らの足で探したいい食材を全国から仕入れる、まさに食道楽がなせる業。だからこそ、白水氏の料理は人々を幸せにできるのだろう。

 「九州以外から来られたお客様には九州のいい食材を知っていただきたいし、逆に地元のお客様には全国のよいもの知っていただきたい。野菜や魚介類は九州が中心です。アラ(クエ)などは活けを仕入れ、自分で神経締めをして血を抜き、2週間ほど熟成させます。そうすることで自分が最高と思う熟成に仕上げることができる。このスズキも神経締めしました」。

 上質なスズキの味を生かすため、ソースは使わずシンプルな塩味に。「龍のヒゲ」と呼ばれる珍しい野菜やハーブを練り込んだアボカドディップ、コブミカンの香りを移したオイルが、エスニックな風味を添えている。

オープンキッチンで対話しながら料理のストーリーを届ける

川辺の風景に癒されながら、洗練されたダイニングで優雅な食事を

 実際に産地に赴き、そこで出会った生産者の思いを料理にのせたい。そんな白水氏の思いは、店内にも表れている。那珂川と中洲の街並が一望できる大きな窓。夜にはロマンチックな夜景が広がり、店内の前面には舞台のように躍動感あふれるオープンキッチンが添えられている。

「オープンキッチンにすることで直にお客様と話ができ、塩分量を減らしたり量を調節するだけでなく、即興でアレンジしたり、自分の感性をスッと届けられるようになりました」と語る白水氏。「足を運んで見つけてきた自信のある食材や生産者などの話もでき、料理ひとつひとつにより物語が生まれるようになりました。それをお客様が楽しみ、ぼくの料理を味わってくださったときがなによりもうれしいんです」。

『唐津の赤ウニとフランス産ムール貝 バニラ風味の卵黄と共に』

「生産者の思いや、いい食材に出会ったときのワクワク感を料理に込めたい。店名の【ローブランシュ】は白い水。水の流れのように器によって自由に形を変える変幻自在の料理を作っていきたいです」と語る白水氏。

 上の一皿は、卵の殻を器にして、赤ウニとムール貝をバニラ風味の卵黄と組み合わせた、鳥の巣の中の卵をイメージさせる独創的な逸品。ねっとりとした卵黄のコクとウニの甘みが、口の中で絶妙に溶け合い、上にのったムール貝の泡ソースが旨みをプラスしている。
型にはまらない、見た目にも美しく楽しめる料理は、水のようにあふれ出る白水シェフのアイデアを形にした、どこにもない一皿だ。

信頼のおけるパートナーが生み出すワインペアリング

多彩なコース料理に合わせて、個性豊かなワインをペアリング

 ソムリエの佐々木氏とは出会って15年。いつか一緒に店をやりたいという夢を実現したのもこの店だ。そんな佐々木氏がフランス産ワインのほか、品質の確かな国産ワインを厳選。コース料理に合わせて楽しめる『ワインペアリング5種』というメニューも用意され、皿ごとに多彩なマリアージュを堪能できる。また、チャージ540円(税込)だけで21時以降はバーとして利用が可能なのも使い勝手がいい。

「ゆっくりコース料理を楽しむのもいいし、気軽にその日の気分で立ち寄れる場所にもしたかったんです。だから、バータイムにはメニューはないんです」と白水氏。「お客様と今日はこんなのが食べたいなどと話して、即興で料理を作る。常連様だけでなく、初めてのお客様にもそんな自由きままな料理を楽しんでいただけたらなと思っています」。

 美食の街、博多に欠かすことのできないレストランがまたひとつできた。

ローブランシュの店舗情報

 白水氏はフォーカスシェフとしてフランスレストランウィークに参加し、佐賀産の日本酒を使ったデザートを供する。「日本酒はテロワールが出やすい。今回はフランス菓子のババを日本酒でアレンジしました。楽しみにしていてください」。その他、八女茶や産山村あか牛を使った独創ある料理で魅了してくれる。

提供元: ヒトサラマガジン[hitosara magazine]
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楠井祐介(フリーライター)