記事元:ヒトサラMAGAZINE

今アツいフレンチシェフに迫る連載。今回は、宮城県塩釜にある人気レストラン【シェヌー】でスーシェフを務める赤間善太氏。父子二代に渡って作り上げる三陸の魚介を中心としたフレンチには、“地のおいしいもので東北を元気にしたい”という愛があふれている。

CHEF'S EYE

✔ヨーロッパ修業で気づかされた地元の海の幸の魅力
✔アットホームでいつまでも愛されるレストランに
✔父の味を大切にしながらオリジナリティを出す

ヨーロッパ修業で気づかされた地元の海の幸の魅力

スーシェフの赤間善太氏

【シェヌー】オーナーシェフ、赤間善久氏の長男として生まれ、幼少期から“海の幸フレンチ”に慣れ親しんで育った赤間善太氏。調理師学校を卒業後、父親の元で修行をしていたが、本場のフランス料理も学んでみたいと渡仏した。パリでは【ル・プレヴェール】にてスパイスの魔術師とも言われるフィリップ・ドラクルセル氏に師事。次にアルザス地方の一つ星レストラン【ル・セール】にてジビエ料理やフランス伝統料理を学ぶ。2年半のフランス修行後帰国。父の元で再び学び、2013年スーシェフに。三陸の海の幸をはじめ、東北六県の恵みをあますとこなく使い、父子で東北を元気づける料理を生み出している。

市場で目利きして買い付ける鮮魚

「フランスでは、日本人には思いつかないような食材の組み合わせや盛り付けに出会い、驚きの連続でした。でも最も大きな気づきは、塩釜の魚介類が、とてつもなく新鮮でおいしいということでした」と赤間善太氏。修行先のパリもアルザスも海からは程遠い内陸部。レストランにはもちろん魚介料理はあるけれども、その鮮度の違いは歴然。改めて地元の魚介の良さに気づき、もっともっと海の幸を使っていきたいと強く思ったという。

新鮮な魚介がたっぷりの『三陸の幸サラダ』

 そんな塩釜の海の幸を代表する一皿がこの『三陸の幸サラダ』だ。ヒラメやスズキ、アイナメなどの白身の魚に、北寄貝、ホタテ、タコ、イカ、それに季節によって生ガキや白ボタンエビまで入る。グリーンペッパーやオリーブオイル、塩で軽くマリネするだけのシンプルな調理法で魚介本来の味わいを引き出している。合わせる野菜も採れたての味の濃いもの。マスタードをベースにしたドレッシングを絡め、少しアクセントを利かせてある。

「これは1980年に【シェヌー】がオープンしてからずっと愛され続けているサラダなんです。魚介の旨みをストレートに味わってほしい。見慣れてしまっていたのですが、海のない街に行ったことで、このサラダの本質に気づかされました。野菜にも海の幸にも恵まれていないと成立しないサラダを、ずっと作っていけるような環境をこの先も守っていかなければならないと思っています」。

アットホームでいつまでも愛されるレストランに

海の幸を使ったフランス料理は日本酒とも相性抜群

【シェヌー】の料理は魚介をたくさん使うだけに、ワインはもとより日本酒ともすごく相性がいい。

「塩釜は酒蔵が多い街で、いいお酒がそろっています。うちの料理は日本酒とも相性がいいんです。もちろんワインもそろえていますが、一度日本酒とのペアリングにもチャレンジしてほしいですね。驚きと共に、こんな楽しみ方もあるんだときっと喜んでもらえるはずです」。

 なるほど、キリッとしたのど越しや、お米のふくよかな甘みが海の香りを引き立てている。

10種類ほどのケーキが並ぶデザートワゴン

 日本酒やワインと共にゆったりと海の幸を堪能した後のデザートにも驚かされる。なんとワゴンに乗って10種類ほどのケーキが運ばれてくるのだ。そこから好きな3種類をチョイス。長年行っているこのサービスも【シェヌー】の特徴だ。

「女性のお客様が多いので、このデザートワゴンが運ばれてくると皆さん歓声をあげてくださいます。そんな幸せな声を聞くのが一番うれしいですね。だから日にもよりますが、10種ほどのケーキを用意しています。最後の最後まで楽しんで大満足で帰っていただきたいですね」と赤間善太氏。

絵画がかけられたギャラリーのような店内

 ゆっくりと大満足のひと時を楽しんでほしいという思いは、店内にも見てとれる。白をベースにした落ち着いた店内の至る所に、フランス在住の画家、唐川武紀氏の絵画や食器などが飾ってあり、まるで小さなギャラリーのようだ。

「料理だけでなく、空間も楽しんでほしい。家族でお店をやっているアットホームな雰囲気がお客様にも伝わり、リラックスして楽しんでもらえれば嬉しいです。個室もあるのでお子様も大歓迎、季節ごとに絵画も変わります。最後のお茶とデザートとともにゆったりすごしていただきたいです」。

父の味を大切にしながらオリジナリティを出す

 生まれ育った塩釜やその地域で採れるものを愛し、この地ならではのフランス料理で訪れる人を喜ばせたい。そして、塩釜をはじめ東北を元気づけたい。店を開いたときに思い描いたその願いは、震災を通してさらに深くなり、オーナーシェフである父から息子へ確実に受け渡されている。

「以前アラン・デュカス氏が来てくださったときに言われた言葉があるんです。“二代目は変化しなくていい。進化すればいいんだ”と。今ある父の味を大切にしながら、少しずつ自分の味を出していきたいです」。

 味を引き継ぎながらも進化し続ける赤間善太氏の料理に、これからますます目が離せない。

シェヌーの店舗詳細

赤間善太氏はフォーカスシェフとしてフランスレストランウィークに参加。牡蠣や仙台牛、薬莱山のわさびや仙台味噌など東北の幸を使ったフランス料理を供す。「茶碗蒸しのようなアミューズや、お茶漬けからヒントを得た料理を作る予定です。東北の幸を味わいにきてください」。

提供元: ヒトサラマガジン[hitosara magazine]
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楠井祐介(フリーライター)